カリフォルニアで法人を設立する際、必ず必要となるのが「送達代理人(Agent for Service of Process)」の指定です。これは会社法上の必須要件であり、会社の登記申請(Articles of Incorporation)やLLC設立申請(Articles of Organization)に欠かせない要素です。本記事では、送達代理人とは何か、その役割や要件について解説します。
送達代理人とは?
送達代理人とは、会社やLLCに対して裁判所からの訴状や政府機関からの公式通知など、法的文書を受け取るために指定される人物または法人です。
会社が法人格を持つ以上、物理的に文書を受け取る「窓口」が必要となります。送達代理人はその役割を果たし、受領した文書を速やかに会社に伝達します。
送達代理人を指定しなければならない理由
- 法的手続の適正確保:会社が裁判や行政手続に巻き込まれた際、確実に通知を受け取れるようにするため。
- 透明性の確保:一般の取引先や個人が、登記記録を通じて会社の送達代理人を確認できるようにするため。
- コンプライアンス上の要件:カリフォルニア州務長官(Secretary of State)は、送達代理人の情報を登記記録の必須項目としています。
送達代理人の要件
送達代理人には、以下の条件があります。
- 住所要件
- カリフォルニア州内に居住する個人、またはカリフォルニア州で登録された法人(たとえばRegistered Agentサービス会社)。
- P.O. Box(私書箱)のみでは不可。必ず物理的な住所(street address)が必要。
- 年齢・能力要件(個人の場合)
- 18歳以上の成人であること。
- 法的文書を確実に受け取り、会社へ伝達できる能力があること。
- 法人を代理人にする場合
- カリフォルニア州で「登録代理人(Registered Corporate Agent)」として正式に認可されている法人であること。
送達代理人の選び方
- 自分または役員を代理人とする場合:自宅やオフィスの住所を公開する必要があるため、プライバシー保護の観点では注意が必要。
- 専門サービスを利用する場合:年間費用はおおよそ100ドル〜300ドル程度。法的通知の確実な受領とプライバシー保護がメリット。
まとめ
送達代理人は、会社の法的安全性と透明性を確保するための必須要件です。指定を怠ると、登記申請が受理されなかったり、最悪の場合は裁判で不利な扱いを受ける可能性もあります。カリフォルニアで法人設立を検討する際には、送達代理人の要件と役割を正しく理解し、信頼できる代理人を選定することが重要です。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言を構成するものではありません。具体的な事案については、必ずカリフォルニア州における資格を有する弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和
