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カリフォルニアでの会社設立と株式登録免除申請のポイント

カリフォルニア州で会社を設立する際、創業者や共同出資者に株式を発行することは一般的です。しかし、株式は「有価証券」として扱われるため、原則として州や連邦政府への登録(qualification/registration)が必要となります。もっとも、スタートアップや中小企業が最初の段階で株式を発行する際には、「登録免除」制度を利用するのが通常です。この登録免除の仕組みと実務上の手続きについて解説します。


  • 原則:カリフォルニア会社法(California Corporations Code §25110)により、有価証券の売付け・発行には州の資格取得が必要。
  • 例外(登録免除):特定の条件を満たす場合、登録は不要。ただし多くの場合は「通知書の提出」が義務付けられています。

§25102(f) Notice(Limited Offering Exemption Notice)

  • 創業株主や少数の投資家に株式を割り当てる場合に利用される免除。
  • 要件:
    • カリフォルニア居住投資家が35名以下
    • 一般勧誘(広告・公募)なし
    • 投資家はリスクを理解できる能力を有していること
  • 実務:
    • DFPI(州金融保護・イノベーション局)にNoticeを提出
    • 提出方法:オンラインシステム(FRANSES)
    • 提出期限:最初の売付から15日以内
    • 手数料:発行金額に応じて$25〜$300

§25102(o) Notice(ストックオプション・従業員持株制度)

  • 役員・従業員へのストックオプション付与や株式報酬制度を導入する際に必要。
  • 通常、会社設立直後に将来の人材採用を見越して利用されます。
  • 提出先・方法・期限は§25102(f)と同様にDFPI(FRANSES経由)。

Regulation D(Reg D)

  • 外部投資家から資金調達する場合に利用される制度。
  • Rule 506(b)/506(c) が最も一般的。
  • 必要書類:
    • **Form D(Notice of Exempt Offering of Securities)**をSECに提出
    • 提出期限:最初の売付から15日以内
  • 留意点:
    • Rule 506オファリングは連邦法により州の登録は不要(preemption)ですが、州への通知提出と手数料は必要です。

  1. 定款(Articles of Incorporation)を州務長官に提出し、会社を設立。
  2. 初回取締役会で株式発行を決議。
  3. 創業株主に株式を割り当てる。
  4. DFPIに§25102(f) Notice(LOEN)を提出
  5. 外部投資家がいれば、SECにForm Dを提出し、カリフォルニア州にも通知を行う。
  6. 従業員持株制度を導入する場合は、§25102(o) Noticeを提出

カリフォルニアで会社を設立する際、株式発行は単なる社内手続ではなく、証券規制に基づく法的義務が伴います。特に、創業株主への割当であっても、§25102(f) Notice(LOEN)の提出が必須です。外部投資家や従業員向けの株式発行では、Form Dや§25102(o) Noticeといった追加対応も必要になります。

スタートアップの初期段階での株式発行において、これらの通知義務を怠ると、後に投資契約やM&Aの際に法的リスクが顕在化する可能性があります。会社設立の際には、必ず証券規制の観点から登録免除申請を確認することが重要です。


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。具体的な案件については、必ずカリフォルニア州の弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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