カリフォルニアでレストランを開業し、ビールやワイン、カクテルなどの酒類を提供するには、州と市の両方で定められたライセンスを取得する必要があります。カリフォルニア州全体では、California Department of Alcoholic Beverage Control(略称 ABC) が酒類ライセンスの発行を統括していますが、実際の手続きや要件は都市ごとに異なります。
この記事では、サンフランシスコとロサンゼルスのレストランで酒類を提供するためのライセンス制度を比較し、それぞれの申請手続き・注意点について詳しく解説します。
サンフランシスコのレストラン酒類ライセンス
サンフランシスコ市でレストランが酒類を提供する場合、まず州のABCライセンスの取得が必要です。主なライセンスタイプは次の通りです。
- Type 41:「On-Sale Beer & Wine」レストラン内でビール・ワインを提供
- Type 47:「On-Sale General」ビール・ワイン・スピリッツを含む全酒類を提供
- Type 87:サンフランシスコ限定の特別オンセール・ライセンス(枠数制限に対応)
ABCライセンスの申請には、事業形態の証明、店舗の平面図、リース契約書、売上税登録(Seller’s Permit)などが必要になります。通常、申請から発行までは3〜6か月ほどかかり、近隣住民への通知・異議申立てなどが行われます。
サンフランシスコでは、酒類ライセンスの総数に制限(ライセンス枠)があるため、既存のライセンスを購入・譲渡するケースも多く見られます。また、ライセンス料は高額になる傾向があり、申請手数料が約19,000ドルを超えることもあります。
サンフランシスコでの注意点
- ライセンス枠の空き状況を事前に確認する
- 近隣住民の異議申立てに対応できる準備をする
- 複数の部門(保健局・都市計画・警察など)との調整が必要
- ライセンス譲渡・買収も一般的な手段
ロサンゼルスのレストラン酒類ライセンス
ロサンゼルスでも、ABCライセンス(Type 41またはType 47など)が基本ですが、市独自の都市計画上の許可制度が存在します。それが「CUB(Conditional Use Permit for Alcoholic Beverage)」および「Restaurant Beverage Program(RBP)」です。
CUBは、アルコール提供が周辺環境に与える影響(騒音、交通など)を審査する制度で、公聴会を経て許可が下ります。一方、RBPは特定の条件を満たしたレストランに対して簡略化された手続きを認める制度です。
RBPの主な要件
- 常時テーブルサービスを提供していること
- クラブ的な営業形態ではないこと(入場料・ライブ演奏などなし)
- 営業時間と提供時間の制限を守ること
- 対象エリア内のレストランであること
RBPの要件を満たす場合、CUB手続きよりも短期間・低コストで酒類提供の許可を得ることができます。
ロサンゼルスでの注意点
- RBPの対象地域・要件を事前に確認する
- 対象外の場合はCUB手続きを行う必要がある
- ゾーニング・用途制限に注意
- ABCライセンスと市の許認可を並行して進める
サンフランシスコとロサンゼルスの比較表
項目 | サンフランシスコ | ロサンゼルス |
---|---|---|
ライセンス枠制限 | 上限あり。既存ライセンスの購入が一般的 | 地域制限あり。RBPで新規取得も可能 |
申請期間 | 3〜6か月以上 | RBPで短縮可能(通常2〜4か月) |
都市計画許可 | 都市計画・保健・警察の承認必要 | CUBまたはRBPの承認必要 |
コスト | 高額(申請料・コンサル費用含む) | RBP活用で比較的低コスト |
酒類ライセンスの取得は、単なる申請手続きではなく、都市計画・保健・消防・住民調整など、多くの要素が絡みます。特にサンフランシスコではライセンス数が限られているため、ライセンス譲渡や買収を視野に入れることが実務的です。
ロサンゼルスでは、RBPを活用することで、比較的スムーズに酒類提供の許可を取得できる可能性があります。ただし、対象エリア・業態の確認を怠ると、申請のやり直しやCUBへの切り替えが必要になることもあります。
いずれの場合も、最新のABCガイドラインおよび市条例を確認し、弁護士や許認可コンサルタントと連携して進めることが重要です。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言を構成するものではありません。実際のライセンス申請にあたっては、最新の法令および各市当局のガイドラインをご確認ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ・ベイエリア・ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和