田中良和国際法律事務所|米国法人設立サポート

レストランを居抜きで借りるときの注意点

レストランの開業や店舗拡大を検討されている皆様へ。

既存のレストランの設備や備品(Fixtures, Furniture & Equipment)をそのまま引き継ぎ、店舗スペースを借りる、いわゆる**「居抜き(Asset Purchase)」**での物件取得は、初期費用を抑え、素早くビジネスをスタートできる非常に賢い選択肢です。

しかし、契約の手順を誤ると「店は借りられないのに、厨房機器だけ買い取ってしまった」という悪夢のような事態になりかねません。

今回は、弁護士の視点から、レストランを居抜きで購入・賃借する際に、エリアを問わず共通して押さえておくべき法的ポイントを解説します。

ビジネス売買(Business Transfer)において、**エスクロー(Escrow)**の利用は非常に重要です。

契約交渉中、最終的な契約書にサインをする前であっても、売主から「手付金(Deposit)」の支払いを求められることがあります。この際、絶対に売主の個人口座や会社の口座に直接振り込んではいけません。

  • リスク: 交渉が決裂したり、売主に問題があった場合、直接渡したお金を取り戻すのは困難です。
  • 対策: エスクロー会社、または弁護士の信託口座(Trust Account)など、中立な第三者の口座にデポジットを預けます。

エスクローを使うことで、全ての条件が整い、契約が完全に締結されるまで売主にお金が渡らない仕組みを作ることができます。これは、売却対象のビジネスに隠れた負債がないかを確認(UCCサーチ等)するためにも不可欠なプロセスです。

居抜き物件の取得には、大きく分けて2つの契約が存在します。

  1. ビジネス・資産譲渡契約 (Asset Purchase Agreement): 厨房機器、家具、在庫、暖簾(Goodwill)などを買う契約。
  2. 店舗リース契約 (Commercial Lease Agreement): 物件を大家(Landlord)から借りる契約。

最大の注意点は、この2つを法的にリンク(連動)させておくことです。

もし、この2つが独立した契約になっていると、「備品の購入契約は成立してお金を払ったが、大家がリースの引き継ぎを承認してくれなかった」という事態が起こり得ます。

Contingency(前提条件)の設定

ビジネス売買契約書の中に、必ず以下の条項を入れてください。

「店舗のリース契約が締結(または譲渡)できることを、本ビジネス売買契約完了の条件とする」

法的には「Contingency(停止条件/不確定条件)」と呼ばれます。この条項を入れることで、万が一リース契約が結べなかった場合、備品の購入契約も白紙に戻し、手付金を返還してもらうことができます。

時折、ビジネスの売主が「大家とは私が話をつけておくから、あなたは私とだけ話せばいい」と言ってくるケースがあります。しかし、これを許してはいけません。

店舗の貸主と直接交渉できないと、以下のようなデメリットがあります。

  • 情報の不透明性: 実際の家賃や共益費(NNN)がごまかされている可能性がある。
  • 交渉の停滞: 伝言ゲームになり、希望条件が正確に伝わらない。
  • 将来の関係: 売買が終われば売主はいなくなります。今後、賃貸借関係が続くのは大家とあなたの間です。

弁護士を介してでも構いませんので、**「大家との直接交渉」**ができる状態を確保してください。もし売主がこれを拒む場合、その取引自体に不透明な部分がある可能性を疑うべきです。

「他に買いたい人が待っているから」と急かされても、その場でサインをしてはいけません。

一度サインをしてしまうと、その契約内容に法的に拘束されます。「よく理解していなかった」「口約束とは違った」という言い訳は通用しません。

特に以下の点は、サイン前に必ず専門家にチェックを依頼してください。

  • 免責文言(Indemnification): 売買以前に発生していた問題(未払いの税金や訴訟など)について、買主が責任を負わない明確な条項があるか。
  • リースの期間: 投資を回収できるだけの十分な期間が残っているか(更新オプションの有無など)。
  • 現状有姿(As-Is): 設備が壊れていた場合の修理義務の範囲。

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レストランの居抜き物件取得は、スピードとコストの面で大きなメリットがありますが、契約構造は複雑です。

  1. お金はエスクローに入れる。
  2. 備品購入は、リース契約ができることを条件にする。
  3. 大家とは直接話す。

この3点を守るだけで、大きなトラブルの多くを防ぐことができます。

本記事の情報は一般的な法的情報の提供を目的としており、特定の案件に対する法的アドバイスではありません。州や国によって法律が異なる場合がありますので、個別の契約案件や法的判断については、必ず現地の法律に詳しい専門家にご相談ください。

具体的な契約書のレビューや、大家・売主側への修正案の作成が必要であれば、いつでもサポートさせていただきます。まずは初回相談をご利用ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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