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敷金に関する新ルール

特に、昨年(2024年)に敷金(Security Deposit)の上限が「家賃の1ヶ月分」に制限されたこと(AB 12)を受け、契約更新や退去精算の実務についての確認を求めるオーナー様、あるいは返還額に疑問を持つテナント様からの問い合わせが多くなっています。

カリフォルニア州ではテナント保護の傾向が続いていますが、2025年も新たな法律**「AB 2801」**が施行され、敷金返還時の手続きがさらに厳格化されます。

今回は、2025年4月1日より順次適用される、退去時の「証拠写真」に関する義務について解説します。

これまでも、オーナーが敷金から清掃費や修理費を差し引く場合、領収書や明細書の提示が必要でした。しかし、具体的な破損状況の証明までは曖昧なケースも少なくありませんでした。

AB 2801は、この透明性を高めるための法律です。 もっとも大きな変更点は、オーナーが敷金から「修理費用」や「清掃費用」を差し引く際、その根拠となる証拠(Evidence)の提供が法律で明確に義務付けられたことです。

2025年4月1日以降、オーナーがテナントの退去に伴い、敷金から修理費用等を差し引く場合、以下の対応が必要になります。

  • 写真等の証拠提供: 修理が必要な損傷箇所について、その状態を示す写真や画像を提供しなければなりません。単に「壁の修繕:500ドル」という請求書だけでは不十分となり、なぜその修理が必要だったのかを視覚的に証明する必要があります。

これにより、「元からあった傷なのか、テナントがつけた傷なのか」という水掛け論を防ぐ狙いがあります。

また、退去時のダメージを証明するためには、論理的に「入居時はきれいだった」という証拠も必要になります。本法の流れを受け、2025年7月1日以降は、入居時のコンディションチェックにおいても写真記録などの重要性が増します。

法律は、オーナーに対して入居時の状態を記録する機会を適切に設けることを求めています。比較対象となる「入居時の写真」がない場合、退去時のダメージがテナントによるものだと証明することが難しくなる可能性があります。

今後は、退去時の検査(Walk-through)のプロセスを見直す必要があります。

  • 修理が必要な箇所は必ず写真を撮り、日付入りの記録として残す。
  • その写真を、敷金返還の明細書(Itemized Statement)と共にテナントへ送付できる体制を整える。

これらを怠ると、正当な修理であっても敷金からの差し引きが法的に認められず、全額返還を求められるリスクがあります。

テナント側にとっても、この法律は身を守るツールとなります。 もし敷金が差し引かれて戻ってきた際、その損傷箇所の写真が添付されていない、あるいは身に覚えのない破損を主張された場合は、AB 2801に基づいて説明を求めることが可能です。

また、ご自身でも入居時と退去時に部屋の写真を撮っておくことは、不当な請求へのもっとも有効な対抗策となります。

AB 2801の施行により、カリフォルニア州の賃貸借契約における「記録」の重要性は格段に高まりました。

「以前と同じやり方」で敷金精算を行っていると、思わぬトラブルに発展する可能性があります。4月の適用開始に向けて、管理体制の確認をお勧めいたします。


※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、法的助言を構成するものではありません。個別の案件については専門家にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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