カリフォルニアやニューヨークで寿司やラーメンや日本食のレストランが人気です。
日本と比べて客単価も高いので、カリフォルニアやニューヨークで飲食店を経営したいという方も多いと思います。
飲食店オーナーが必ず確認すべき 10 の注意点
レストランを開業するとき、**最も重要な契約の一つが「商業用リース契約(Commercial Lease Agreement)」**です。
賃料以外にも、隠れた追加費用・使える時間帯・建物の改修制限・営業継続義務など、多くのリスクが潜んでいます。
飲食店のリースは、オフィスや小売店と異なり、厨房設備、排気ダクト(Type I Hood)、グリーストラップ、ADA(障害者法)対応、騒音、使用時間など特有の問題が多いため、特に注意が必要です。
この記事では、カリフォルニアでレストランのリース契約を締結する際に必ず確認すべき主要ポイントを解説します。
1. 「使用目的(Permitted Use)」の記載が十分か
レストランでは、以下のような固有の営業が含まれるため、具体的な使用目的がリースに明記されているかを確認する必要があります。
- dine-in / take-out / delivery の可否
- 夜間営業・アルコール提供の可否
- 厨房設備・調理方法(フライヤー、ガス、グリル等)
- 食品製造・仕込み行為の許容範囲
使用目的が狭く書かれていると、後から許可されない可能性があります。
2. 排気フード(Type I Hood)の設置・修理費用の負担
飲食店では Type I Hood(油煙フード) の設置・清掃・修理が不可欠です。
リース契約では、これらの負担区分が曖昧なことが多く、トラブルの原因になります。
- 設置費用は誰が負担するか
- 清掃義務の頻度
- 修理・入れ替え時の責任
- 消防検査の責任区分
ランドロード(オーナー)側が責任を負わない契約も多いため、要注意です。
3. グリーストラップ(Grease Trap)の管理責任
カリフォルニアの多くの市では、飲食店にグリーストラップの設置・清掃が義務付けられています。
確認すべき事項:
- 清掃費用・交換費用は誰が負担?
- ビル全体で共有するタイプの場合、自店の負担割合は?
- 交換が必要な場合のルールは?
4. 追加賃料(CAM Charges / NNN)が高額にならないか
レストランのリースは、以下の「隠れ費用」が発生することがあります。
- 共益費(CAM: Common Area Maintenance)
- 建物保険
- 固定資産税
- ゴミ処理費用(飲食店は高額)
- 排水・水道料金
賃料よりも CAM が高くなるケースもあるため、必ず過去3年分のCAM明細を請求してください。
5. 建物改修(Tenant Improvements: TI)のルール
厨房設備や内装工事のため、レストランの改装費は高額になりがちです。
チェックポイント:
- 工事費用の負担(ランドロード補助はあるか)
- 設計図の承認プロセス
- 工事期間中の賃料支払い有無
- 原状回復義務の範囲
特に、排気ダクト・ガスライン・スプリンクラー工事はランドロードが制限する場合があります。
6. ADA(障害者法)コンプライアンスの責任
カリフォルニアでは ADA 違反を理由とした訴訟が非常に多く、レストランは特に要注意です。
- バスルームの ADA 適合は誰が保証するか
- 店舗内の段差・入口幅の責任は?
- ランドロードの構造部分とテナント部分の線引き
リース契約に ADA の責任がすべてテナント側に押し付けられているケースもあり、訴訟リスクが増大します。
7. 営業時間・騒音・排気に関する制限
ショッピングセンターや住宅地に近い場所では、以下の制限がある場合があります。
- 夜間営業の制限
- 騒音規制(ライブ音楽が不可等)
- アルコール提供の制限
- 屋外パティオ(デッキ)の使用可否
- 排気の方向・匂いの苦情対応
リース締結前に、市の zoning とランドロードのルールを必ず確認してください。
8. 独占営業(Exclusive Use Clause)があるか
隣のテナントに同じ業態のレストランが出店すると売上に影響が出ます。
- オーナーが同じモール内に同業他社を入れないことを約束するか
- 権利の範囲(例:ラーメン・寿司などカテゴリー別の独占か)
- 例外規定の有無
“Exclusive Use”条項は、飲食店にとって非常に重要です。
9. 保険(Liability Insurance)と免責条項(Indemnity)
レストランは事故リスクが高く、契約で以下が定められています。
- 一般責任保険(General Liability)
- 火災・厨房事故の保険
- ランドロードの免責条項(Indemnification)
免責条項が広すぎると、ランドロード側の過失でも責任を負わされる可能性があります。
10. 解約条項(Early Termination)とサブリース(Assignment)
飲食店は売却・譲渡が多いため、以下を必ず確認してください。
- 途中解約のペナルティ(残り賃料の全額請求など)
- 店舗売却時のリース譲渡(Assignment)の許可基準
- 保証人(Personal Guaranty)の解除
- “Good Guy Clause”の有無(途中退去時の救済措置)
特に **Personal Guaranty(個人保証)**は、オーナー個人の資産に影響するため慎重に判断してください。
【まとめ】
レストランのリース契約には、飲食店特有の法的リスクや隠れた費用が多数存在します。
契約後にトラブルが起こると、数十万ドル単位の損害につながることもあります。
契約前に、以下を必ず確認してください:
- 使用目的の明確化
- 厨房設備・排気・グリーストラップ
- CAM・追加賃料の内訳
- ADA・騒音・営業時間制限
- 独占条項
- 契約解除・譲渡条項
飲食店のリースは専門性が高いため、契約締結前に弁護士によるレビューを強く推奨します。
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法律上のアドバイスではありません。具体的な案件については、カリフォルニア州の弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和
