田中良和国際法律事務所|米国法人設立サポート

Representative Director (代表取締役)はいない

(※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案についての法的助言ではありません。個別の事案には事実関係が異なるため、本記事の内容のみに依拠して行動することはお控えください。必要に応じて弁護士等の専門家へご相談ください。

アメリカの会社法(州法)は日本と大きく異なり、日本の「代表取締役(representative director)」という制度そのものが存在しません。そのため、会社の「代表権」を持つポジションも日本とは別の構造になります。


1. 会社を代表するのは「Officer(役員)」

アメリカの株式会社(Corporation / Inc.)では、会社を代表するのは Officer(会社役員・執行役) です。

代表権を持つ Officer は通常、以下のいずれかです:

  • President(社長)
  • CEO(Chief Executive Officer)
  • COO(Chief Operating Officer)
  • Secretary
  • CFO(Chief Financial Officer)

外部と契約したり会社を代表して行為するのは、多くの企業で President または CEO です。


2. Director(取締役)には代表権がない

アメリカの取締役(Director)は、会社の運営方針や重要事項を決める監督側であり、
代表権はありません。

日本のように「取締役会の中から代表取締役を選ぶ」という制度もありません。

取締役会(Board of Directors)は、Officer に代表権を付与する仕組みです。


3. Officer は取締役会が任命する

一般的な構造は次のとおりです:

  • 株主が Director(取締役)を選任
  • Director が Officer(President/CEO 等)を任命
  • Officer が会社の代表行為を行う

つまり、会社の代表者は「取締役」ではなく「Officer」 です。


4. 代表権は「職名(Title)」で決まる

アメリカでは、代表権は人ではなく 職位(title) に紐づきます。

例:

職名代表権
Presidentあり
CEOあり
COO代表権を持つ場合あり
CFO財務に関する代表権を持つことがある
Secretary文書署名担当だが一般的代表権ではない

5. 登記にも「代表取締役」という欄はない

カリフォルニアの法人の登記書類(Statement of Information)には:

  • CEO
  • Secretary
  • CFO

の記載欄はありますが、
代表取締役(Representative Director)という概念そのものが存在しません。


6. 日本企業が誤解しやすいポイント

よくある誤解:

  • 「取締役=代表者」ではない
  • 「Chairman(会長)が代表者」でもない(監督ポジションが一般的)
  • 会社契約の署名者に Director を出すのは誤り
  • アメリカ子会社を日本本社の役員名義で署名するのは不適切な場合がある

7. LLC(合同会社)は「Manager」または「Member」が代表

LLC の場合は次のように代表者が決まります:

  • Manager-managed LLC → Manager が代表
  • Member-managed LLC → Member が代表

こちらも日本の合同会社とも異なる部分があります。


まとめ

  • アメリカには 代表取締役制度は存在しない
  • 代表権を持つのは Officer(President / CEO)
  • Director は監督者で、代表行為を行わない
  • LLC は Manager か Member が代表
  • 代表権は職名(title)に紐づく

【免責事項(Disclaimer)】

本記事は、一般的な法的情報の提供のみを目的として作成されています。特定の事案に対して法的助言を行うものではありません。
具体的な会社設立、役員構成、代表権の設定等については、事案ごとに異なりますので、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。

カリフォルニア拠点(ロサンゼルス、ベイエリア、サンフランシスコ)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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