田中良和国際法律事務所|米国法人設立サポート

日本の会社が米国で不動産を所有し賃貸する場合、外国法人登録は必要?

日本の会社がアメリカで不動産を購入し、それを第三者に貸して賃料収入を得るケースは近年増えています。しかし、ここで注意すべき大きなポイントがあります。

米国の多くの州では、外国法人(Foreign Corporation)が州内で事業活動(doing business)を行う場合、州のSecretary of State への「外国法人登録(Foreign Entity Registration / Qualification)」が義務付けられているためです。

本記事では、特に日本企業が米国で不動産賃貸業を行う場合、外国法人登録が必要となる理由、しない場合のリスク、実務対応について解説します。


不動産を所有するだけなら「事業」とみなされないこともある

まず、不動産を単に所有しているだけでは、多くの州では「doing business」とみなされず、外国法人登録が不要とされることがあります。

しかしここで重要なのは、

「賃貸」や「管理」が発生すると状況が大きく変わる
という点です。


賃貸活動は通常「事業活動(doing business)」とみなされる

以下のような行為は、一般的に州法で「事業活動」と扱われます。

  • 継続的な賃料収入を得る
  • 入居者募集
  • 賃貸契約書の締結
  • メンテナンス・修理手配
  • 賃貸管理会社との契約
  • 不動産賃貸をビジネスモデルとして行う

これらに該当すると、州内で継続的なビジネスを行っていると判断され、
外国法人登録が必要になります。


外国法人登録をしない場合のリスク

外国法人登録を怠ったまま貸し出し行為を行うと、以下のような問題が発生する可能性があります。

1. 罰金やペナルティ

州ごとに異なりますが、未登録のまま事業を行った期間に応じて高額の罰金が発生することがあります。

2. 裁判で「訴える権利」を失う

多くの州では、外国法人登録をしていない会社は、
州内で訴訟を提起できない(収入の回収や契約違反の訴訟ができない)
という制限があります。

滞納家賃の回収訴訟ができないという重大な問題につながります。

3. 過去にさかのぼって登録費用や税申告の修正が必要

後から登録した場合でも、未登録期間の修正手続きや費用が必要になり、実務負担が大きくなります。


LLC を設立するケースが多い理由

日本企業が不動産を所有する場合、州ごとの実務では以下の方法がよく選ばれます。

  • 日本企業が直接所有 → その州で外国法人登録
  • 日本企業が米国子会社(LLC)を設立 → そのLLCが不動産を所有・賃貸

後者が選ばれる理由は、

  • 日本企業が外国法人登録をしなくて済む
  • 賃貸収入と税務申告が整理しやすい
  • 賃貸物件に関する責任を LLC で限定できる

など、実務メリットが大きいためです。


結論:「人に貸す」なら外国法人登録が必要になる可能性が高い

不動産を「所有しているだけ」なら問題ないケースもありますが、

第三者への賃貸(継続的な収入行為)がある場合、ほぼ確実にその州での外国法人登録が必要になります。

また、適切な法人形態(LLC / corporation)の選択や、
税務(連邦税・州税)との整合性も重要です。


弁護士によるサポート

  • 外国法人登録の代理申請
  • LLC 設立と組織運営契約(Operating Agreement)作成
  • 賃貸契約書のレビュー
  • 日本本社と米国子会社の法務整理
  • 州税務(Franchise Tax)に関する注意点の整理

日本企業の米国進出や米国不動産投資に精通した弁護士がサポートいたします。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律助言ではありません。具体的な案件については、必ず弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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