カリフォルニアで家やビジネスを買う際、膨大な量の英語の書類にサインをすることになります。「エージェントがここだと言うから」と、内容をよく読まずにサインしていませんか?
その中に、あなたの虎の子の資金(手付金)を守るための生命線が書かれています。
しかし、注意してください。契約書が巧妙に作られていて、わざと複雑で理解が困難なように作成している契約書もよく見かけます。非常に悪質な不動産業者が多いのも事実です。
特に恐ろしいのが、「Contingency(契約解除条件)」の変更です。当初の条件を後からこっそり変更しようと、Contingencyの変更契約に、何の説明もなくサインさせようとすることもあります。
今日は、この言葉の意味を曖昧にしたまま手続きを進めることの危険性と、契約書で確認すべきポイントについてお話しします。
1. そもそも「Contingency」とは何か?
法律用語としては「停止条件」などと訳されますが、不動産取引においてはもっとシンプルに以下のイメージを持ってください。
「正当な理由で契約を白紙に戻すことができる権利(脱出装置)」
通常、不動産契約にはいくつかの「Contingency」が含まれています。 これらの条件が満たされない場合、買い手はペナルティなしで契約をキャンセルし、預けた手付金(Earnest Money Deposit)を全額返金してもらうことができます。
逆に言えば、このContingency期間が過ぎたり、あるいは最初からこの権利を放棄(Waive)してしまうと、後から「やっぱり買うのをやめたい」と言っても、手付金は戻ってきません。
2. カリフォルニアの契約書にある「3大コンティンジェンシー」
契約書(Purchase Agreement)には、主に以下の3つの重要な「脱出装置」が設定されています。ご自身の契約書で、これらが**「有り(included)」になっているか、「期間は何日か」**を必ず確認してください。
① インスペクション・コンティンジェンシー (Inspection Contingency)
家の状態を調査するための期間です。 専門家によるホームインスペクションの結果、シロアリ被害や基礎の欠陥など、許容できない修繕箇所が見つかった場合、修理を要求したり、契約を解除したりできます。
- ここをチェック: 「As-Is(現状有姿)」での売買であっても、調査する権利(Investigation right)まで放棄しているわけではありません。混同しないように注意が必要です。
② アプレイザル・コンティンジェンシー (Appraisal Contingency)
銀行などによる「家の資産価値の鑑定」に関する条件です。 もし、鑑定額(Appraisal Value)が購入価格より低く出た場合、差額を現金で埋めるか、売り手に値下げ交渉をするか、あるいは契約をキャンセルするかを選択できます。
③ ローン・コンティンジェンシー (Loan Contingency)
住宅ローンの融資が最終的に承認されることを条件とします。 「事前審査(Pre-approval)」に通っていても、最終審査で落ちることはあり得ます。この条項があれば、万が一ローンが降りなかった時に、手付金を失わずに契約を解除できます。
3. 「Waive(放棄)」のリスクを知っていますか?
カリフォルニア、特にベイエリアやLAなどの売り手市場(Seller’s Market)では、ライバルに勝つために**「Non-Contingent Offer(コンティンジェンシーなしのオファー)」**を勧められることがあります。
これは、「どんなボロ屋でも、鑑定額が低くても、ローンが降りなくても、絶対に買います(キャンセルしません)」という宣言です。 売り手にとっては魅力的ですが、買い手にとっては**「パラシュートなしで飛び降りる」ようなもの**です。
もし「All Contingencies Removed(全ての条件を削除)」という書類にサインをしてしまった後にキャンセルをすると、通常、物件価格の3%を上限とする手付金(数万ドル〜数十万ドル!)が損害賠償(Liquidated Damages)として没収される可能性が極めて高くなります。
4. 契約書を「読む」ことの重要性
エージェントは取引を成立させるプロですが、法律の専門家ではありません。 「みんなやっているから大丈夫」「この条項は形式的なものだから」という言葉を鵜呑みにせず、**「自分が今、どんな条件下で契約しようとしているのか」**を自分の目で確認してください。
- どのContingencyが残っているか?
- それぞれの期限(Deadline)はいつか?
- 期限が来たら自動的に権利が消えるのか、それとも書面での削除(Removal)が必要なのか?
これらは契約書の条文にはっきりと書かれています。
おわりに
マイホームやビジネスの購入は人生最大の買い物です。「英語が難しいから」とあきらめず、特にこの「Contingency」のセクションだけは、指差し確認をするくらいの慎重さが必要です。
もし、契約書の内容に不安がある、あるいはエージェントの説明だけではリスクが判断できない場合は、サインをする前に弁護士によるレビューを受けることを強くお勧めします。数万ドルの手付金を失うリスクに比べれば、事前の確認費用は決して高いものではありません。
(免責事項: 本記事は一般的な情報の提供を目的としており、法的助言ではありません。契約内容は個別のケースにより異なります。)
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和
