全米でネットビジネス(プラットフォーム事業)を展開する場合、見落とされがちな重要論点の一つが「Unclaimed Property(未請求財産)」です。特に、クリエイターやサービス提供者の報酬をプラットフォーム内に留保できる仕組みを採用している場合、各州法への対応が不可欠となります。
本記事では、実務上押さえるべきポイントを簡潔に整理します。
1. 想定されるビジネスモデル
本記事の前提となるモデルは以下の通りです:
- プラットフォーム運営会社がオンラインサービスを提供
- 各州のサービス提供者(クリエイター等)が顧客にサービス提供
- 顧客からの支払いはプラットフォームを通じて受領
- サービス提供者の報酬はアカウント内に留保可能(即時引出し義務なし)
この「留保された資金」が、Unclaimed Property規制の対象となります。
2. Unclaimed Propertyとは何か
Unclaimed Propertyとは、一定期間にわたり権利者(ここではサービス提供者)によって引き出されていない財産を指します。
典型例:
- 未引出しの報酬残高
- 未請求の支払金
- 長期間ログインされていないアカウント残高
これらは、一定期間経過後、州に「エスチート(escheat)」される義務が生じます。
3. 休眠期間(Dormancy Period)の基本
州ごとに異なりますが、代表的な期間は以下の通りです:
| 区分 | 期間 | 主な州の傾向 |
|---|---|---|
| 短期 | 約2年 | 一部州(例:デラウェアの一部類型等) |
| 中期 | 約3年 | 多くの州(カリフォルニア含む) |
| 長期 | 約5年 | 一部州 |
※どの州法が適用されるかは、通常「所有者(サービス提供者)の最終住所」または「会社の設立州」により決まります。
4. プラットフォーム事業者の法的義務
一定期間が経過した場合、事業者(holder)は以下の義務を負います:
(1) 州への報告(Reporting)
未請求財産の内容を州政府に報告
(2) 通知(Due Diligence)
サービス提供者へ事前通知(通常、報告前60〜120日前)
(3) 州への支払い(Remittance)
未請求資金を州へ送金
5. 実務上の重要ポイント
■ (1) 利用規約での明確化
- 残高の性質(預り金か、支払債務か)
- 引出し期限や条件
- 休眠アカウントの扱い
→ ただし、規約で州法の適用を回避することは不可
■ (2) 統一ポリシーの設計
全州対応のため、以下のような運用が実務的です:
- 最短期間(例:2年)を基準に管理
- 休眠前に自動通知(メール等)
- 一定期間でアカウント凍結・処理フロー開始
■ (3) 州別対応の必要性
完全な統一は困難であり、以下は州別管理が必要:
- 報告期限
- フォーム
- 電子提出要否
- 通知方法(郵送必須の州もあり)
6. よくある誤解
❌「利用規約で失効させれば州に渡さなくてよい」
→ 原則として無効。州法が優先されます。
❌「海外在住のクリエイターは対象外」
→ 米国州法上、一定条件で対象となる可能性あり。
7. まとめ
プラットフォーム型ビジネスでは、未引出し残高は以下の流れで管理されます:
- 一定期間(2年〜5年)未請求
- サービス提供者へ通知
- 州へ報告
- 州へ資金移転
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和
