カリフォルニア州で会社(Corporation)を設立する際、最初に作成・提出しなければならない最も重要な書類が Articles of Incorporation(アーティクルズ・オブ・インコーポレーション/定款) です。
この書類は、会社の「誕生証明書」のようなもので、これを州務長官(Secretary of State)に提出し、受理された瞬間に会社が正式に成立します。
■ Articles of Incorporationの目的と法的役割
Articles of Incorporationは、カリフォルニア会社法(California Corporations Code §200〜§213) に基づく必須書類で、法人としての存在を州に登録するための基本文書です。
この書類を提出しなければ、会社は法的に存在しません。
主な役割は以下の通りです:
- (1) 法人格の創設
提出が受理された時点で、会社が法的に成立します。取締役会の開催や株式発行など、すべての行為はこの日を起点に行われます。 - (2) 会社の基本情報の登録
会社名、目的、本店所在地、登録代理人(Registered Agent)など、会社の基礎情報を州に届け出るための文書です。 - (3) 株式構造(Authorized Shares)の明示
発行可能株式数や株式の種類(普通株・優先株など)を明確に記載する必要があります。これにより株主構成や資本政策の枠組みが定まります。
■ Articles of Incorporationに記載すべき主要項目
カリフォルニア州の標準フォーム(Form ARTS-GSなど)には、以下の項目が含まれます。
- Company Name(会社名)
“Inc.”、“Corporation”、“Corp.”などの法人を示す語を含める必要があります。 - Purpose Statement(会社目的)
一般営利会社の場合、「The purpose of this corporation is to engage in any lawful act or activity…」という定型文を使用します。 - Agent for Service of Process(登録代理人)
訴訟や法的通知を受け取る正式な代表者を指定します。カリフォルニア在住の個人または登録エージェント会社を選択可能です。 - Authorized Shares(発行可能株式数)
会社が発行できる株式の総数を明記します。一般的には1,000株または10,000株などの形で設定されます。 - Incorporator(発起人)
書類を提出する人(Incorporator)の氏名と署名を記載します。
■ 提出方法と設立日
Articles of Incorporationは、
- オンライン提出(bizfileonline.sos.ca.gov)
- 郵送提出
- 窓口提出(Sacramentoオフィス)
のいずれかで行うことができます。
受理された日が**「法人設立日(Date of Incorporation)」**となり、この日以降に会社としての活動が法的に可能になります。
■ Articles of Incorporation提出後の流れ
設立が完了した後も、次の手続きを行う必要があります。
- Statement of Information(会社情報届出)の提出(設立後90日以内)
- EIN(Employer Identification Number)の取得
- Corporate Bylaws(社内規則)の作成
- 株式発行およびStock Ledger(株主名簿)の整備
- 初回Board Meeting(取締役会)の開催
これらを完了することで、会社としての法的・実務的な運営基盤が整います。
■ まとめ
Articles of Incorporationは、会社の「出生証明書」であり、すべての会社活動の出発点です。
この書類を正しく理解し、設立後の手続きも漏れなく行うことが、安定した企業運営への第一歩です。
免責事項:
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律相談ではありません。具体的な事案については、専門家にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州・日本弁護士
田中良和
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